「赤羽と川口は隣同士の駅ですが、家賃相場は赤羽のほうが高い。リモートワークが増えたことで“街のイメージより家賃と住みやすさ”を重視する人が増え、今は赤羽よりも川口の人気が上がっている。買い物、医療、教育など暮らしていくための便利さは、赤羽とほとんど変わらない。西川口にまで行けばさらに家賃が下がるので、いまは“お買い得”の印象が強い。
ただ、今後は人気上昇に伴って、西川口の不動産価格が上がる可能性があります。関西でも同じ構図があると考えられ、大阪市内から梅田などのオフィス街に通うサラリーマンの需要が落ち、近鉄線で30分ほどかかる奈良の生駒などの人気が高まるかもしれません」(鴇巣氏)
こうした地価の大逆転現象が起きれば、個人の人生設計に大きな影響を及ぼす。たとえば、定年後の住まいのダウンサイジングでは、都心のタワーマンションや駅近物件を持っている人ほど、「売って大きな譲渡益を得るか、貸しに出して定期的な賃料収入を得るか」といった豊富な選択肢が持てる“勝ち組”だったが、そうはいかなくなる。都心の物件の「値崩れしない」といった前提が崩れるからだ。
むしろ借り手がいないと思われていた郊外の物件を持っていた人が、定年後の住まい選びで有利になる可能性もある。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号