朝日新聞朝刊(5月25日付)に掲載の『コロナで変わる就活』と題する記事は、ショッキングな“就職戦線の異変”を伝えた。来春卒業予定者の人気企業ランキング上位30社(就職情報会社「学情」調べ、昨年12月発表)を対象に改めて採用予定人数を取材したところ、うち10社が「採用数未定」と回答したのだ。
ランキングの1位は総合商社の伊藤忠商事で2年連続。以下、JTBグループ(旅行)、味の素(食品)、丸紅(商社)と“常連企業”が並んだが、採用予定数は味の素が前年から約30人減の「60程度」、JTBも丸紅も「未定」と回答している。大学ジャーナリストで就活問題に詳しい石渡嶺司氏はこう見る。
「就活の進行中に、突然売り手市場から氷河期入りしたのは極めて稀で、戦後初かもしれない。学生は“夢追い志望”といって子供の頃から憧れていたスポーツやイベント、広告など華やかな業種を志望し続ける傾向があるが、長引くコロナの影響で意識を変化させざるを得ない。今後の調査ではJTBやANA、オリエンタルランドなど人気企業が順位を落とすことが確実視され、ランキングは大変動を起こす」
学情によるアンケートでは、企業説明会やセミナーも開催できず、半数近くの企業が選考を中断しているとの集計結果も出ている。
不況時に人気の高まる公務員にも意外な変化が現われた。“霞が関”に代わって地方自治体が順位を上げているというのだ。
「コロナショックでは国より自治体首長の活躍が目立った。これにより、今後は地方自治体人気が上がる可能性が高い。実際、前年41位の東京都は20位に浮上した」(同前)
かつてない「安定志向」に針が振れる就職戦線となりそうだ。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号