新型コロナウイルスには老若男女を問わず誰にでも感染リスクがある。にもかかわらず、感染者とその周辺に対する世間の目は厳しい。その傾向は、感染者が少ない地方で、より顕著なようだ。地方移住者たちが実感した、田舎ならではのコロナ感染者に対する風当たりの強さをレポートする。
2年前に大阪から生まれ故郷である九州の小さな町にUターンし、知り合いが経営する会社で事務員として働く40代の独身女性・Aさんは、「コロナで田舎の“嫌なところ”が見えてしまった」と落胆する。
「市内で、ある一家がコロナに感染したというニュースが出た翌朝、ゴミを捨てに行くと、近所の人たちが感染者の噂話に花を咲かせていました。公表された年齢、性別、職業、居住地である程度推測できることから、『〇〇地区の〇〇さんの家らしい』という内容です。会社の同僚はもちろん、昼食をテイクアウトした喫茶店の店員まで噂話をしていました」(Aさん)
Aさんは田舎特有の“監視”の目の厳しさを、あらためて実感したという。
「この辺は都会と違い、近隣住民が学校や勤務先などを把握しているケースも多いので、何かニュースがあると、どこの誰なのかすぐに特定される。悲しいことに、その家には心無い貼り紙も貼られていたそうです。私も先日37度の熱が出たことがあり、『もしコロナだったら何を言われるかわからない……』と気が気でなかったです」(Aさん)
東京から近畿地方の山あいの町に夫婦でUターンした、接客業に従事する30代の女性・Bさんは、同じ職場からコロナ感染者が出たことで、仕事にも支障が出るようになった。