中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

給付金を最大限もらうためにあえて収入を減らす人たちのセコさ

「いきなりゼロにすると不自然なので、“コロナのせい”ってことで今月は6万円ぐらい入れていただき、この時の残りの24万円はほとぼりが冷めたであろう7月以降に6万円ずつ4か月にわたって上乗せしてください」

 このような“戦略的収入減の証拠作り(笑)”まで駆使してなんとか100万円を獲得しようとしたフリーランスがいたのも事実です。私自身もフリーですが、発注をする立場でもあるので、これには「ダメですよ(笑)。あなた困ってないでしょ? 税務署が来ます。そうしたら不正請求とかで何らかのペナルティがあるかもしれませんよ。オレのことを巻き添えにしないでください」と伝え、拒否しておきました。

 過去には、当時「年収5000万円」とも言われた、ある高収入の売れっ子芸人の母親が生活保護を受給していたことが明らかになり、ネット上で猛烈なバッシングを食らいました。母親を扶養するのに十分な資産がありながら、「もらえるものならもろとけ」と受給を促すような発言をしたとされ、その考えが世間の反発を呼び、一時期この芸人は仕事が激減しました。今も以前のレベルには戻っていない印象です。

「本当に困っている人がもらうべきもの」を困っていない人がもらうから大きな反発があったわけですし、あれから何年経ってもそのダメージは完全に消えていません。それだけカネにまつわる「セコさ」は人々の怒りに火をつけるのです。

 上で紹介した「振り込み遅延工作」にしても、冗談で言っている人も多かったとは思うものの、「その手があったか!」と感じ入ってしまった発注主がさらに上流にいる発注主に同様の相談をし、「不正受給の連鎖」が続いた可能性はあったわけです。

 今回の給付については「性善説」に基づく部分もあり、「もらえるものならもろとけ」的マインドを多くの人が持ってしまったらどうなるか。本当に困っている人への支援が回らなくなるという怖さがあります。そういった由々しき事態につなげないためにも、こうしたセコい小細工は慎んだ方が良いのではないでしょうか。それが人間としての「矜持」です。

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