中国の好調な経済指標や米国の5月経済指標が事前予想を上回ったことから経済のV字回復への期待が高まり、3日のNYダウは前日比527.24ドル高と3日続伸した。4日の東京市場もこの流れを好感して始まると日経平均は22907.92円まで上昇を見た。しかし、2月21日以来となる節目の23000円を目前とした水準では高値警戒感から利益確定売りが出やすく、後場にはマイナスに転じる場面もみられたが、大引けにかけて持ち直した。
4日のNYダウは4日続伸ながら11.93ドル高と小幅上昇にとどまったことから、5日の東京市場は利益確定売りが先行して、日経平均は5日ぶりに反落して始まったものの、後場に入り上昇に転じた。日本時間5日夜に発表される米5月雇用統計が意識されたものの、欧州中央銀行の金融緩和や為替相場の円安推移が相場の下支え材料として働いた。時間外取引における米NYダウ先物の上昇を受けた買いが入り、大引けの日経平均は5日続伸し、前日比167.99円高の22863.73円で終了した。
今週の日経平均は、2月21日以来となる23000円回復をにらみ高値波乱となることが想定される。東京証券取引所が4日に発表した5月第4週(25-29日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物では2週間ぶりに売り越したものの、先物では大幅に買い越して、現物・先物の合計では2週連続の大量買い越しだった。海外投資家の買い戻しがほぼ一巡することが想定されるなか、需給の節目であるメジャーSQを境に相場のムードが変わる可能性がある。
ここまでは、短期的な上昇幅が大きくテクニカル的な過熱感もあった。3日に日経平均と75日移動平均線との上方乖離は約11%まで拡大した。過去の経験則では75日線のプラス乖離10%以上は過熱数値である。一方、日銀のETF(上場投資信託)買いが5月15日から無いことが示すように相場トレンドは強く、5日移動平均線を下値サポートとする強調は維持している。5日にかけての日経平均5日連続高は今年初めてだ。そのため、ここからは強気で構えつつも相場の急変には注意して臨む局面となっている。
また、5日大引け後の米5月雇用統計を通過し、9日のFOMC(連邦公開市場委員会)を経て10日にはパウエルFRB議長会見と経済見通し、米中の消費者物価、OECD経済見通し発表と、相場に影響の大きい金融イベントと経済指標の発表が集中する。FOMCでは政策が据え置かれて大きな変化はない模様で、経済指標についても大きな波乱は見込まれていないが、要人発言には注意を払う必要がある。
こうした外部要因よりも、東京市場の相場ムードを変える可能性があるのは、緊急事態宣言の再発動という国内要因だろう。東京都で再び感染者の増加が顕著となってくると、手控えムードが増しリスクオフの展開に切り替わる懸念がある。このほか、1000ポイントの大台を回復したマザーズ指数はその後一服しているものの、IPO市場ではブックビルディングが始まることから、中小型株に物色意欲が再度高まってくる期待もある。
今週の主な国内経済関連スケジュールは、8日に1-3月期GDP確報値、5月景気ウォッチャー調査、9日に4月毎月勤労統計調査、5月マネーストック、5月工作機械受注、10日に5月国内企業物価指数、4月機械受注、11日に4-6月期景気予測調査、12日にメジャーSQが予定されている。
一方、米国など海外主要スケジュールでは、9日にFOMC(10日まで)、ユーロ圏1-3月期GDP確報値、OPEC定例総会(ウィーン)、10日に米5月消費者物価指数、パウエルFRB議長会見(経済見通し発表)、米5月財政収支、中国5月消費者物価・生産者物価、OECD経済見通し発表、11日に米5月生産者物価指数、12日に米5月輸出入物価指数、米6月ミシガン大学消費者マインド指数がそれぞれ予定されている。