現代消費の特徴を語るとき、よく「モノからコトへ」(モノのニーズは飽和し、矛先はコト・体験に向かう)という表現が使われます。ですが今回の家計調査では、外食や旅行、催しなど体験型の支出は大幅に減り、家ナカでの生活に必要な物資やハード機器などが増加する結果となりました。これはあたかも「モノからコトへ」の逆流、「コトからモノへ」の巻き戻しが生じているようです。
ただ、これがごく短期的な現象なのか、中長期的なトレンドになるのかについては、もう少し先のデータも踏まえ、みていく必要があるでしょう。
(3)コロナ禍中に増えたこんな支出
最後に、かなり細かい費目にはなりますが、コロナ渦中に増加した支出のなかから、著者の視点で興味深かったものを3つご紹介します。
【2019年4月→2020年4月】
・ハンバーガー(外食):353円→427円(名目増減率+21%)
・生地・糸類:115円→225円(+96%)
・設備材料:1,670円→2,957円(+77%)
前項で外食支出の激減をご紹介しましたが、実は、外食の細目区分のなかで唯一前年比プラスになっていたのが、こちらのハンバーガーです。グラフをご覧いただいても一目瞭然。元々テイクアウト喫食を想定した食べ物であり、かつ、テイクアウトでも単価が下がりにくいことが、比較的「コロナに強い」結果を生んだのではないかと思われます。
同様に、全体では大幅減となった被服及び履物の区分内にも、逆に大幅に伸びた項目があります。それが生地・糸類で、金額的には倍増しています。マスクが手に入りにくい状況も手伝って、手作りマスクの材料として買われたことが寄与していそうです。また最後に挙げた設備材料は、キッチン、テラス、ベランダ等住居まわりの設備や器具が含まれますが、こちらも前年比77%の増加。「ベランピング」など、自宅内をアレンジして自粛生活の充実を図る動きも話題になりましたが、生活の拠点である住居の機能を高めようとする生活者意識が、支出金額にも現れているように感じます。
この先消費は戻るのか?
以上、4月の家計調査を概観してきました。消費支出が全体で1割消失した実態をリアルな数字で突きつけられると、ショックと共に、「5月は、6月はどうなるのか?」と、何か見通しを持ちたい気持ちに駆られます。