北尾吉孝氏と孫正義氏は盟友関係(写真は1999年。時事通信フォト)
──孫氏にアドバイスすることもある?
北尾:携帯電話子会社のソフトバンクを上場(2018年12月)するという時も、僕は反対しました。
「今後の事業環境に何が起こるかわからない。ソフトバンクはソフトバンクグループにとって最大のキャッシュカウ(ドル箱)。株式公開したらパブリックカンパニーになって少数株主の意見も取り入れないとならない」と随分説得したんです。
孫さんは「ソフトバンクの上場でSBI証券も大儲けできるのにやめろと言うんだからもういっぺん考えてみる」と返してくれたけど、結局上場しました。
現在大きな損失を出しているソフトバンク・ビジョン・ファンド(*)もそうです。
【*ソフトバンク・ビジョン・ファンド/ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が2017年に設立した約10兆円を運用するファンドで、世界各地の90社近くの企業に投資してきた。2019年3月期は投資先の価値が大きく上昇し、ソフトバンクグループは過去最高益を記録したが、昨夏以降は投資先の経営が急速に悪化。グループの赤字の原因となった】
「戦略的な事業投資なら高い保有比率もいいけど、未公開企業をポートフォリオとするベンチャーファンドでは売却も難しい。高値で買った企業の株価が大幅に下がる可能性もあり、その場合、動きが取れない」と指摘したら、「北やんはネガティブサイドばっかり見てる。ポジティブサイドもある」と切り返されました。
結局、ビジョン・ファンドが下降線を辿っていた矢先に今回の新型コロナが直撃してしまったわけです。
孫さんは天運に恵まれた人だし、また、人が考えつかない、度肝を抜くようなことをやる天才だから、一発逆転もあり得るでしょう。
僕みたいな凡人がどうだこうだと言うのは敢えて避け、孫さんには何とかこの難局を打破していってほしいと心から願っています。
当社は(ヤフーを傘下に持つ)Zホールディングスと事業提携しましたし、同社の金融ビジネスをサポートすることでお互いにウィンウィンの中で最大限の利益を得られるようにできればと思っています。そういう面から今後も孫さんをサポートし続けます。