新型コロナウイルスの影響で、世界経済は深刻な危機に陥っている。しかしSBIホールディングス・北尾吉孝社長(69)は「今こそチャンス」と前向きだ。野村證券時代から国際派として将来を嘱望され、ソフトバンクの孫正義氏との出会いでネット金融の世界に転じた豪腕社長に、今後の展望を訊いた。
──コロナ禍で企業の在り方も個人の生き方も大きく変わろうとしています。「ウィズコロナ」の時代をどう考えますか。
北尾:まず、東京での感染者数がすでにピークアウトしてから緊急事態宣言で「ステイ・ホーム」を実施したことが正解だったのか、国や地方公共団体がきちんと検証すべきです。
かねて指摘されているように、外出自粛は経済の停滞やDV(ドメスティック・バイオレンス)の増加など負の側面も多い。また新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として推奨されているテレワークについても、その功罪が十分に議論されていません。もしテレワークが社員の生産性や企業の収益力を落とすようなら継続すべきではないかもしれません。
当社では、テレワーク期間中の全社員に業務内容を報告させ、詳しく検証しました。その結果、在宅勤務では明らかにパフォーマンスが低下している社員があぶり出されました。
テレワークを頭から否定するわけではありませんが、企業はその「質」を見極めないといけません。そもそも現在の住環境では多くの人が集中して仕事ができないのではないでしょうか。サイバーセキュリティーも不充分です。
また、金融の世界に生きる我々は、時々刻々と移り変わる世界のマーケットに即座に反応し、常に意思決定していかなければならない。テレワークで十分それができるのか、企業は社員の仕事の「質」、「量」、「生産効率」を総括的に検証した上でテレワークの在り方を考えるべきです。