「掃除がなっていない!」への言い分
続いて向かったのは、甲信越地方の旅館X。郊外の観光地にあり、外観は料亭風でなかなか立派だが……。
口コミを見ると、従業員の接客態度などについて「最悪」と評するものがあり、なかにはいったん部屋に入るも腹に据えかね、宿泊せずに旅館を後にしたという書き込みまで。館内の汚れを指摘するものもあり、掃除がなってないと怒りの声があがるが、本当に?
レンタカーで現地に着くと、ジャージ姿の中年男性が暗い表情で現われ、
「クルマは向こうに停めてください!」
と叱るように言う。確かに印象はあまり良くない。60代後半の女将に案内され館内に入ると、ホコリやクモの糸が目に入り、口コミはあながち間違っていないように思えた。内装は昔ながらの和風旅館で趣を感じるが、洗面所やトイレにはそこそこ目立つくらいに髪の毛が落ちていた。昭和の民宿という感じで、筆者は個人的にはこういうのもシブくて好きではあるのだが。幸い寝具は清潔で、早々と床についた。
翌日の帰り際、女将に話を聞いた。
「ホコリとか汚れって、私はあまり気がつかないんですよ。男性スタッフも私も、接客は好きじゃないんです。気の合う客だけ来てくれたらいいんですけどねえ」
歴史ある旅館を親の代から受け継いだそうだが、プロ意識はあまり感じられない。土産物コーナーには今や懐かしい郵便番号5ケタの絵はがき、星の砂などが置かれ、レトロマニアにはたまらないだろう。だが、女将からも“レトロ”な感じを受け、日々の運営はなかなか大変そうである。