企業がテレワークを導入するに際して、どのようなハードルを乗り越えなければならないのか。特に組織が大きな大企業の場合は、テレワーク導入にも大きな労力が必要となるだろう。ここでは、オフィス向け事務機器などを幅広く手掛けるリコー(東証1部・7752)の実例を紹介しよう。
推進役は社長直轄のプロジェクトチーム
リコーにおけるテレワーク推進の歩みは、2016年4月から導入された在宅勤務制度に端を発する。育児や介護との両立をしたい社員などが主な対象だった制度を全社的な働き方変革の中に位置付けたのが2017年4月。すべての社員に向けてリモートワーク制度(※リコーではテレワークを「リモートワーク」と呼んでいる)を開始したのが2018年4月だ。
リコー単体での従業員数は約8000名(2020年3月末現在)。このようなスケールの大きな企業でのテレワーク推進のポイントはどこにあるのか。
「リコーの働き方変革は、社長直轄のプロジェクトチームを作り、部門横断で取り組む体制をとって進めてきました。社長や働き方変革の担当役員からも、フォーラムやビデオメッセージ等で社員へ向けてメッセージを発信してくれています。方針の発表は社長から社員全員に向けてスカイプなどを使って行われ、社員一人一人に直接メッセージが届けられました」
こう説明するのは、人事本部・人事部ダイバーシティ推進グループの長瀬琢也氏。従業員数が多い企業では、経営トップの強いリーダーシップが欠かせない。
「クールボス宣言」で上司がリモートワークを率先
社員がテレワークをしやすくなるためには、社長や役員自らの意識や会社の風土変革も欠かせない。その一例が「クールボス宣言」だ。
「クールボス宣言とは、各部門の部門長が自ら働き方を変えることを宣言すること。例えば『リモートワークを率先して行います』『会議はリモートでOKです』というメッセージを発信しています」(長瀬氏)
働き方について上司の意識が変われば、部下はリモートワーク制度を利用しやすくなる、というわけだ。
全社的にテレワークを行うには、それを支えるツールと通信インフラの整備が必要だ。
「リコーではOffice 365(現在のMicrosoft 365)を導入し、社内コミュニケーションや情報共有などをすべてリモートで行える仕組みをつくりました。これによってファイル共有、資料の共同編集、リモート会議などが格段にやりやすくなりました。ネットワークの容量も増強しました。リモートワークの利用状況増加に備える必要があったからです」(長瀬氏)