田代尚機のチャイナ・リサーチ

コロナ禍のアパレル苦境でも株価上昇 カナダ発ヨガブランドの実力

足元業績は不調だがオンライン売上が急増

 もっとも、好調な株価の動きに対して、ルルレモン・アスレティカの足元の業績は振るわない。2020年3-5月期の業績は16.7%減収、営業利益段階では74.6%減益、純利益ベースでは3197万ドルの赤字であった。この数字だけ見ると、株は売られてもおかしくないように思うかもしれない。しかし、新型コロナの拡大に伴い小売店舗を閉鎖する一方で、オンラインによる売上が急増、68%増加している。投資家はこの点をポジティブサプライズとして評価している。

 自社販売にこだわっている分だけ、利益率は高く、また、第三者の販売店とのしがらみがない分、オンライン化がしやすいといった特徴がある。同社はアメリカ、カナダを中核としつつもグローバルに展開しているが、2020年2月末現在の店舗数では両国に続き中国が第3位である。その中国ではオンラインでの販売が好調である。

 事業の多角化にも積極的で、6月29日、オンラインでフィットネス講座を提供するスタートアップ企業のミラー社を5億ドルで買収すると発表している。この買収によって実店舗にこだわらないデジタル化戦略が強化されることになるだろう。

 アフターコロナの世界では、消費構造が大きく変わりそうだ。アパレルのような厳しい業界にあっても、局所的に需要の高まる製品サービスはある。国別では中国の景気回復が早く、力強い。また、単なるEC取引業者だけでなく、オンラインを使った実況や、インフルエンサーを使った販売促進など、インターネットを上手く使った企業にもビジネスチャンスはある。変化の大きい時期こそ、ピンチをチャンスに変える企業が出てくるだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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