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コロナで「企業大再編」加速か 現役だけでなく退職者にも影響

コロナで各業界の「大再編」が加速か(イメージ)

コロナで各業界の「大再編」が加速か(イメージ)

 日本企業が岐路に立たされている。東京商工リサーチがまとめた新型コロナウイルス関連の経営破綻件数は、2月からの累計で331社(負債1000万円以上、7月16日時点)。

 その多くが中小企業だが、大企業も大幅な減収減益が相次いでいる。経済活動の停滞で、かつてない需要の減少に見舞われていることが大きい。例えば航空業界は利用客が90%以上減った(2020年5月、前年同月比)。総需要が減れば、それを多数の企業で奪い合っている場合ではなくなる。

 やってくるのは「大再編の時代」だ。経済ジャーナリストの福田俊之氏が指摘する。

「各企業は新たな成長戦略を探っているが、感染拡大が止まるまでのサバイバル戦略に過ぎない。ポストコロナの行動変容に合わせた効率的な経営を模索する合従連衡が生き残るための絶対条件になることは間違いない。もともと“ひとつの業界に大手が多すぎる”といわれてきた日本企業が変わるための最後のチャンスかもしれない」

 たとえば、人口3.2億人のアメリカでは、大手3社に航空会社が集約されているが、人口1億人余りの日本にはJALとANAの2社がある。両社の経営統合でさえ、机上の空論ではない。こうした「大再編の時代」は新ビジネス創出のチャンスである一方、それに伴う痛みも大きい。

 大再編が予想される航空、コンビニ、旅行、自動車、建設、外食、ホテル、小売りなど8業種の主要企業の従業員数(連結)は計約107万人。再編の影響が取引会社などにも波及することを考えれば、その数倍の労働者に影響は及ぶ。人事ジャーナリストの溝上憲文氏はこう分析する。

「人口規模と比較すると、日本企業は数が多いと指摘されてきた。国内も海外も需要が減る以上、統合再編は避けられず、余剰人員はリストラされる可能性が高いでしょう」

 現役世代だけでなく、すでに退職しているOBも他人事ではない。

「多くの会社で、企業年金が減額されると思います。過去には松下電器やJAL、りそなが、経営危機でOBの企業年金の減額を行なっている。減額にあたって企業はOBに“お伺い”を立てなければならないが、破綻する可能性を示されれば、応じざるを得ない」(同前)

 大再編時代の到来を他人事で済ませられる人など、存在しないのだ。

※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号

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