昭和の名経営者たちにはカリスマ性があった。「やってみなはれ」で知られるサントリーの佐治敬三氏は数々の伝説を作ってきた。そうした昭和の経営者たちが現在の「窮地の有名企業」を任されたとしたら、どんな打開策を巡らすだろうか。ここでは、『経済界』編集局長の関慎夫氏が、「もし三越伊勢丹の社長が佐治敬三氏だったらどうするか」を考えてみた。
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先の決算で、大手百貨店の中で唯一、赤字を出した三越伊勢丹は、さらに今年度の赤字幅が600億円に拡大するとの見通しを発表した。
新宿店、日本橋店、銀座店の3店舗で、インバウンド需要を主体に、売り上げ、利益のほとんどを挙げているという歪な収益状態だったが、新型コロナの影響で一気に需要がなくなり、窮地に陥っている。
現在、恵比寿店など4店舗の閉鎖を決め、構造改革に取り組んでいるが、まだ成果は出ていない。
他の百貨店が、店舗のフロアを貸して賃料で儲ける不動産事業に転換しているのに対し、三越伊勢丹は前任の大西洋社長時代に、売場づくり、商品開発、マーチャンダイジング力で勝負する百貨店の王道路線を進んできたが、その後赤字に転落した。今は他社と同じ路線に転換している最中で、三越創業の日本橋店にビックカメラの出店を受け入れたのは、同社の決意を表明した出来事だったと言える。
百貨店の王道路線を否定され、三越伊勢丹の社員の多くは自信を喪失しているのではないか。そんな状況からの再生を任せるとしたら、サントリーの二代目社長、佐治敬三氏が浮かぶ。