新型コロナウイルスの影響もあり、名だたる日本企業が不調に喘いでいる。それは、孫正義氏率いるソフトバンクグループとて例外ではない。孫氏ほどの経営者であってもこの状況だが、はたして過去の日本の名経営者だったらいかに同社の舵取りをするか。ここでは、経済ジャーナリストの福田俊之氏が、「もしソフトバンクの社長が中山素平氏だったらどうするか」考えてみた。
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ソフトバンクグループはこの3月期決算で純損失9615億円という過去最大の赤字を計上した。これまで投資してきたシェアオフィスのウィーワークやホテル業のオヨが巨額の赤字を出して経営危機に陥り、新型コロナでライドシェア大手・ウーバーの株価が下がったことなどが原因だ。
ソフトバンクGの事業が敗戦処理モードに突入すれば、融資先の企業や傘下の企業などがみな損失をかぶることになり、誰もが不幸になる。
このような局面でソフトバンクの再建を依頼するとしたら、中山素平氏にお願いしたいものだ。中山氏なら単なる敗戦処理ではなく、ソフトバンクのリソースをより有効に活用し、新たなビジネスの素ができるかもしれないという期待感がある。
中山氏は、興銀(日本興業銀行)の頭取を務めたが、広く日本の産業界を育成した実績を持つ人物だ。手がけたなかでもっとも大きい案件は、1970年の富士製鉄と八幡製鉄の大型合併で、新日鉄を誕生させた。
他にも鉄鋼の分野では、日銀の反対を押し切って、川崎製鉄の大型製鉄所を千葉につくったこともある。日本にとって製鉄業の育成が必要だという判断があったものと考えられる。