低地帯である荒川区は、荒川の氾濫による水害が危惧される一方で、荒川区役所周辺、尾久警察署周辺など「自然堤防」と呼ばれる微高地が存在する。昔は自然堤防の上を中心に集落があったが、現在は住宅地のほとんどが元水田で、地盤の軟弱さが心配される。
東京五輪(1964年)をきっかけに百棟を超える団地ができた足立区花畑地区(地図内「A」参照)は、明治時代に周辺の村と合併するまで「花又」という地名だった。「又」は河川の合流部を意味し、水害リスクの高さを示している。
「火災旋風」が動き回ることはない
さらに住宅が密集する下町は、火災にも警戒が必要だ。東京大学生産技術研究所教授の加藤孝明さんが話す。
「『火災旋風』という現象があり、“巨大な火柱が竜巻のように襲ってくる”と誤解されて報道をされることが多い。火災現場の周辺で炎を含まない大きなつむじ風が起きることはありますが、火柱が動き回ることはまずない。火事の延焼速度は時速数十m~数百m程度で歩行速度よりはるかに遅いので、落ち着いて行動すれば追いつかれる心配はありません。ただし、大都市では同時多発的に火災が発生するので、囲まれる可能性はある。その点には注意が必要です」(加藤さん)
正しい知識が混乱を防ぐ。
※参考/東京都建設局「東京の液状化予測図 平成24年度改訂版」、東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査」、国土交通省国土地理院デジタル標高地形図、『首都大地震 揺れやすさマップ』(目黒公郎監修/旬報社)、『川の地図辞典 江戸・東京/23区編』(菅原健二著/之潮)
※女性セブン2020年8月20・27日号