しかしながら、そのまま食べるのではない。アレンジを加えます。味付けとしてマヨネーズがすでに塗られていますが、ここにハーフカロリーのマヨネーズとマスタードを追加します。さらに、レタスとスライスチーズも加えます。スライスチーズは正方形ですが、真ん中から半分に割くと、丁度半分に切ったミラノサンドの長さに合うのですね。
さらに、野菜コンソメの粉末である「サラダエレガンス」と黒胡椒もパラパラと振ることにより、おつまみ度合をグンと上げることができます。
元々生ハムはビールの定番つまみですし、レタスサラダもビールには合う。そこに塩気のあるパストラミビーフがあればビールに合わないわけがない。そして、ミラノサンドのパンというのが、これが表面パリパリで塩気もある、実に美味なるつまみなのです。パンを中心とし、野菜・肉・チーズ・調味料が織りなすこの調和はまさに井上陽水と安全地帯が1986年に歌った『夏の終わりのハーモニー』のごとき見事なる味を醸し出すのであります。
ミラノサンドについて色々な人に評価を聞いてきたのですが、「あれはパンがうまいんだよ!」という声をよく耳にしました。私もそれは常々思っていました。なんとかあのパンだけ買って、あとは大量のスモークサーモンとかローストビーフを入れた超絶豪華サンドイッチをいつか食べたいものだ……。
そう思い、ドトールで「パンだけ売ってもらえますか?」と聞いたらそれはできないとのこと。やはり「激足し」しかできないかな、と思っていたところ、「オレの友人の兄貴がドトールの店舗のオーナーでオレが『パンだけ買いたい』と友人に言ったら『しょうがねぇなぁ。1回だけだぞ。兄貴がお前のために用意してくれたよ』とくれたことがある」という話を聞きました。
本当はやってはダメですよ。でも、このエピソードにしても、ドトールのパンがいかにおいしいか、の証左ではありませんか。とにかくミラノサンドAはビールに合う! これは力説したいところであります。
◆中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう): 1973年生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。新刊は『意識の低い自炊のすすめ』(星海社新書)、『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。