平日にもかかわらず、待機席には20名ほどが座っており、受け取りまでに1時間はかかることが雰囲気から伝わってくる。中には、子供や孫に言われて申請に来たと思われる年配者も。書類不備や理解不足などから対応に時間がかかっていたようだった。
「正直、本人確認書類に何を持ってきたらいいのか、受け取った手紙だけでは不十分だと感じました」
松島さんはホームページを確認した上で役所へ向かったが、ネットに疎い人の場合、書類不備を指摘され、何度も足を運ぶことになる可能性も考えられる。
子供の出番は、申請時に提出した写真と受け取る本人が同一かどうかの確認のみだったので、子供たちは“早く帰りたい”などとぐずり出して大騒ぎ。全ての手続きが完了したのは16時30分頃だったが、一家4人全員が疲れ切っていた。役所から自宅までは距離があるため、帰りもタクシーを使ったそうだ。
「大人だけなら我慢して歩いたりしますが、小さな子供がいるとそうもいきません」
「赤字というわけではないけれど…」
今回のマイナンバーカード申請で、松島さんたちはあることに気づいたという。
「会社と保育園を早退、それに我が家の場合はタクシー代が行き帰り2回分で約4000円。この労力で得られるのが最大2万ポイント……。トータルすると赤字というわけではないと思いますが、そんなに得じゃないのかなって思ってしまいました」
テレビCMなどでは、“子供の分もマイナポイントもらえますよ!”といったアピールがあるほど、家族全員でのマイナンバーカード取得を進めている。しかし実際は、子供を連れて役所に手続きに行かなくてはいけないという高いハードルがある。
子供が小さいほどそのハードルは高く、働き方や家族構成など生活状況によっては受け取りが厳しいケースもあることが考えられる。多くの国民にマイナンバーカードを普及させたいのであれば、マイナポイントの付与だけでなく、取得しやすさなども政府は検討すべきではないだろうか。