注目されたジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の講演では、インフレ目標変更により物価2%超も容認する新指針が発表された。長期にわたる低金利維持の思惑がさらに強まったほか、ウイルス検査の拡大期待も加わって27日のNYダウは続伸した。この流れを受けて28日の東京市場はメガバンク、自動車株を中心に買いが先行して、日経平均は3日ぶりに反発のスタートをみた。しかし、14時過ぎにNHKが安倍晋三首相の辞任意向を報じたことを受けて、日経平均は一時614.07円安と急落し、大引けでは326.21円安の22882.65円と波乱の展開となった。
今週の日経平均は、23000円ラインを挟んでの往来相場が予想される。辞任発表の安倍首相は、後任が決まるまで執務にあたるとされており、東京市場で大きな波乱は回避されそうだ。今後の関心は「ポスト安倍」に移るが、日経平均は米国市場次第で上値を試す展開も予想される。
27日のパウエルFRB議長の講演で、長期にわたる低金利維持の思惑が高まったことはNYダウの下支え要因として働くことが期待されている。ハイテク株の利益確定売りを交えながらも上昇するNYダウは、終値ベースで2月20日以来となる29000ドル台を視界にとらえており、大台替えとなると東京市場にとっても心理的な追い風として働くことになる。
また、今週は9月1日に米8月ISM製造業景況指数、2日に8月ADP雇用統計、3日に米7月貿易収支と、相場への影響が大きい米国の主要経済指標の発表が相次ぎ、米国市場の動向に東京市場のセンチメントも左右されやすい。
4日の日本時間21時30分には米8月雇用統計の発表が予定され、週明け7日はレーバーデー(労働者の日)でNY市場は休場となる。この米国雇用統計とNY市場3連休を控えた東京市場は、週末にかけて手控えムードが広がる可能性もある。
一方、相場を取り巻く全般を見渡すと、新型コロナウイルス感染動向、国内政局動向、米中対立といった懸念材料が上値を抑えるものの、大きく売り込む材料が見当たらないのも事実だ。安倍首相の辞任意向で海外投資家の今後のスタンスは気になるものの、不透明材料のひとつに結論が出たことは確かだ。米国株と為替動向次第で、日経平均は上値をうかがう場面もあるだろう。