家族間の揉め事だけが相続トラブルではない。家族は仲がいいのに、少しの確認を怠ったために、非常に面倒な手続きや処理が必要になる、といった事例が絶えない。そもそも相続手続きのミスは、誰にでも起こり得るものだ。
「現代の日本は超高齢社会や、デジタル資産の登場などで相続を取り巻く環境が多様化しています。そのため、手続きも複雑になり、うっかりミスを起こしやすいのです」
と言うのは、一般社団法人しあわせほうむネットワーク/司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏。見逃しがちな手続きの“落とし穴”と、手遅れになる前に打つ解決策を考える。
思わぬ借金が死後に発覚! 相続放棄の手続きが必要に
「事業を営んでいた父の多額の残債が見つかりました。自宅の土地を売っても大きく上回る負債額だったので、相続人の兄たちと放棄しました。自宅と預貯金をもらえると期待していたのですが……」
と語るのは、都内在住の60代男性Aさん。母は早くに亡くなり、相続人はAさんと兄、弟の3人。父の死後にいきなり現われた「負の遺産」に兄弟は、「財産放棄」を念頭に話し合いをした。夢相続代表取締役で相続実務士の曽根恵子氏が解説する。
「相続はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産にも法定相続割合が適用されます。足し引きすると負の財産の方が多くなり、相続によって負債を負うことになりそうなら、相続放棄を考えてもいいでしょう」