相続放棄申述書は住所地の家裁で用紙を受け取り、作成する(別掲図C参照)。
申述人と被相続人の住所氏名などを記入し、放棄の理由の該当箇所をマークし、相続財産の概要を記入する。負債総額がわからなければ「不明」と記せばOKで、収入印紙を貼付して提出する。
一方、生前に財産目録などを作成しておらず、負債総額がわからないことがある。その際に有効なのが「限定承認」だ。前出の野谷氏の解説。
「資産はあるが、高額の負債も見つかるかもしれず不安だという場合、“遺産額の範囲内しか負債を相続しない”というのが『限定承認』です。たとえば1億円を限定承認して相続した場合、あとから2億円の借金が見つかっても、支払い義務があるのは1億円のみで、残りの1億円を弁済する必要はありません」
相続放棄と同じく、限定承認も原則、被相続人の死後3か月以内に家庭裁判所で手続きする。
「ただし、限定承認は相続人全員の手続きが必要なので要注意です」(前出・野谷氏)
ちなみに、ここまでは共同相続人に負債がのしかかるケースだが、遺言書によって自分だけ負債の相続を命じられた場合はどうなるのか。
「遺言書があれば、指定された人物が負債を引き継ぎます。ただし、本人が不公平だと思えば、相続放棄を選ぶことも可能です。また相続人全員の同意があれば、遺産分割協議を行ない、負の遺産を含めて、ほかの相続人と分けあえる可能性があります」(前出・曽根氏)
いずれにせよ、生前に可能な限り借金なども含めた財産を把握しておくことが重要だ。
※週刊ポスト2020年9月11日号