分譲マンションなら、役員はいずれ回ってくるものだ。友人からは、管理組合がグダグダだと資産価値にも影響するとアドバイスされ、気合を入れて定期総会に出席。理事長として議事を進行したが、出席者の態度には呆れるばかりだったという。
「定期総会は1時間強で無事終わりました。でも室内なのにサングラスをかけたままの人や、足の蝶番が壊れているのではないかと思うくらい足を広げ、ふんぞり返って座っているチャラチャラした若造がいて、正直『何だコイツは』と思いました。それでも出席しただけマシですが」
なかなかの高級マンションだけに、“それなりの人”が揃っていることを期待したが、それはMさんの勝手な期待だった。オフィス街も近いので、高年収のパワーカップルが多いかと思いきや、スーツ姿の住民は少数派。投資目的の購入者も少なくないことが分かった。また、クジで決められた役員リストには多数の外国人らしき名前が含まれており、彼らは役員会活動には極めて消極的だった。
「役員会の書類は、『委任状』『議決権』『管理委託契約について』『第3号議案について』『理事の職務遂行について』など、日常会話では使わない単語がバンバン出てくるので、外国人役員は早々に参加を諦めたようです。
間に入る管理会社からも、『外国人を役員や理事長に選んでも構いませんが、言葉が理解できないと、いざという時にトラブルになりますし、理事会に一度も出席してこないようだと、色々なことが決まらなくて困りますよ』と、アドバイスされました。どうやら3分の1近くの住民が外国人で、大半が中国人ですが、役員業務は事実上、日本人が担うことになりました」
多忙すぎる「理事長の仕事」
理事長の仕事は多忙を極めた。1年目ということもあり、駐輪場や駐車場の承認、管理組合の書類の確認、火災保険、植栽の維持費、防災訓練、敷地内の違法駐車への対応、地元の公立小学校との連絡、エントランスのクリスマスツリーや門松の設置、町内会への加入……かなりの時間を割くことを求められた上、総会では時に矢面に立たされた。
「色々な書類は、理事長である私のハンコが無いと進みません。会社ではペーペーですが、ある意味“社長気分”です。海外出張先で管理組合のメールの処理に追われたこともあります。