もう少し補足すれば、内外の投資家はいくらかの制約はあるが、個人にしろ、機関投資家にしろ、A株も、H株も、買うことができる。しかも、通貨が違うだけで、いずれの株式も、配当金額、株主の権利の面でも、まったく平等である。にもかかわらず、内外の投資家は、こうした格差を当然のことように受け入れている。
ファンダメンタルズに関する株価評価は一般投資家が考えているほど確かなものではなさそうだ。
FRBが資金供給を続ける限り株高トレンド続くか
新型コロナ対策によって景気が著しく悪化する中でFRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和策を実施。ETF(上場投資信託)の形で株式を購入し、直接、株式市場を安定させようとさえしている。
ファンダメンタルズ見通しの良い銘柄には大量の資金が流入し、ファンダメンタルズ見通しの悪い銘柄からは資金がわずかに抜けるだけである。こうした形で、平均株価は上昇する。
平均株価が上昇すれば、それを見て普段、株式投資をやらないような投資家が市場に参入する。そうした投資家が増え始めたら、経験豊富な投資家も判断基準を甘くして、より高い株価水準を容認するようになる。
結局、株価評価を考える上で最も重要なことは、資金供給の程度であり、株式需給である。株価の高さを正当化する理屈は後付けで何とでもなる。FRBが資金供給を続ける限り、株高トレンドが続きそうだ。
今後の株価動向を予想する上でカギとなるのは、金融緩和を止めざるを得ない状況がいつ来るのかという点だ。
なかなか起こりそうになりインフレだが、その兆候がはっきりし始めたときなのか。それとも、全ての債券の中で最も安全とされており、指標となるアメリカ長期国債の安全性が揺らぐほどアメリカの財政が悪化したときなのか。多くの投資家がそう心配し始めたときには、長期金利の上昇が止まらなくなるだろう。
いずれにしても、この強い上昇相場には乗っておきたいと考える投資家は多いだろう。しかし、その出口をきちんと見極めるのは容易ではなさそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。