株式市場を襲う「コロナ・ショック」。新型コロナウイルスの感染拡大が世界の株式市場に大きな打撃を与えているが、もうひとつ見逃せない問題がある。原油価格の大暴落だ。
発端は、3月5~6日に開かれたOPEC(石油輸出国機構)プラスの会合だ。原油価格の回復を図るための協調減産が話し合われたが、ロシアが反発し協議は決裂。そこに追い打ちをかけるように、中東最大の産油国であるサウジアラビアが、同国産原油の大幅値下げと増産を表明した。
これを受けて、原油市場の代表的な指標であるWTI原油先物価格は大暴落。今年2月までは1バレル=50ドル台で推移してきたが、3月9日には2016年以来となる1バレル=30ドル割れとなる歴史的大暴落となった。その後も原油価格回復の見通しは立っていない。
この原油価格の暴落は、世界の株式市場に大きな影響を与えることになる。トルコ出身エコノミストのエミン・ユルマズ氏が語る。
「原油価格の下落はまずアメリカの『シェール企業』の業績に影響します。3月9日の米株式市場の下落はこれらエネルギーセクターにおける企業の業績悪化を懸念したことが理由のひとつでしょう」(以下同)
アメリカはシェール(頁岩)層から原油を採掘する技術を発展させ、2018年には世界1位の産油国に返り咲いた。しかし今回のサウジアラビアの原油増産表明で、4月以降は世界の原油が供給過多となり、需給バランスが崩れてしまう。このまま原油価格が低迷し続けば、アメリカのシェール企業は採算がとれなくなり、経営難に陥る恐れがある。