「確かにこの会社は満身創痍の状態です。だがまだ死んじゃいない!」──銀行員の企業再建に向けた熱意に、社員たちも奮い立つ。『半沢直樹』(TBS系)の一場面なのだが、実際の銀行員はどのように赤字企業の再建に関わっているのか。
銀行が経営を立て直した象徴的なケースとして、元みずほ銀行支店長で作家の江上剛氏が挙げるのはアサヒビールだ。1980年代、アサヒビールは新参のサントリーにまで抜かれそうになるほどシェアを落とし、経営難に陥っていた。
「住友銀行(現・三井住友銀行)から村井勉氏、樋口廣太郎氏と2代続けて副頭取が社長として送り込まれた結果、“夕日ビール”と揶揄されていたアサヒは『スーパードライ』という大ヒット商品を生み出し、長年トップだったキリンを一気に抜き去った。
その推進力となったのが樋口氏で、酒屋を一軒一軒訪問し、自ら前垂れを掛けて店頭に立ち、社員の意識を変えた。これは銀行マンだからではなく、樋口廣太郎という人の凄さと言えるでしょう。
銀行による経営再建が難しいのは、“再建に失敗しても銀行に戻れる”という安心感があるからで、その会社に骨を埋めるぐらいの意識がないと難しいことです」(江上氏)