周囲の大人の振る舞いが「早生まれ」の不利を生む
「入学した高校の偏差値を比べると、3月生まれの子は4月生まれの子より4.5も低いことがわかりました。大学進学率が低いという研究報告もあります。大人になってもその差は解消されず、早生まれの人は30~34才のとき、早生まれ以外の同世代より所得が4%低いという研究報告も出ています」(山口さん・以下同)
驚くことに、生まれ月の差は、成人後の収入差にまでつながっているというのだ。原因を分析するには「認知能力」と「非認知能力」のバランスに鍵があると山口さんは分析する。認知能力とは、IQテストや学力テストなどで測る「頭のよさ」を指し、一方の非認知能力とは、「最後までやり抜く力」や「自制心」「他人といい関係を築く力」など、社会性、情緒、内面の能力を指す。
「近年の研究で、社会的に成功する人は非認知能力が高いことがわかってきています。早生まれは遅生まれに比べ、幼少期の認知能力と非認知能力がともに低い傾向にありますが、親は学業の成績に目がいきやすいため、認知能力を上げるための教育投資に偏重する傾向があります」
山口さんの調査によると、中学3年生の時点で、3月生まれの生徒は4月生まれに比べて週に0.3時間多く学校外で勉強し、読書時間も0.25時間多く、塾に通っている率も3.9%高かったという。一方、小4~中3を対象にした調査で、学年によって多少のバラつきはあるが、スポーツや外遊びに費やす時間が最大で週に0.52時間少なく、学校以外での美術、音楽、スポーツ活動に費やす時間が最大で0.19時間少なかった。
「子供は、スポーツや子供同士の他愛ない遊びなどから自制心や対人関係の築き方を学びます。学業への偏重が、非認知能力が育ちにくい環境をつくっている恐れがある」
前出の中村さんのように、早生まれの子供は対人関係に苦手意識を持つことが多く、それは年を重ねるにつれ改善するどころか悪化するケースも珍しくないという。
※女性セブン2020年10月1日号