帰り際──。夫が声を荒らげてこう言ったそうです。
「あの講師平気なの? お前に任せてたら無理だわ。俺が願書書くし質問も答える。本番の面接ではお前は黙っていろ」
そしておもむろに渡された願書の下書きは、想定文字数の5倍以上。自分の自己紹介と、世の受験論に対する意見がたっぷり書かれていました。
「記入するには文字制限もあるのわかっている?」という紗子さんの指摘に「お前ってさ、何でも普通。これで人の心に響くの? なにも個性なし」「小学校受験は親が7~8割なんだろ? じゃあ俺の考えを書いたほうがいいじゃないか」──夫はそういうと、紗子さんの願書の紙を振り回しながらこう続けました。
「そもそも俺は社会に出て、世の中の上位数%の高収入者。そんな成功例に対して、お前はただ塾に通わせただけでしょ? 俺の読みのほうが先見の明があるし、学校を分析して理解できている。俺の生き方の結果、お金がついて来てる。それで今暮らしてるんだろ?」
それを聞いて紗子さんは、「ここまでせっかく娘が頑張ってきたのに、その頑張りを無駄にされたらどうしよう……」とふさぎ込んでしまいました。
この「自分は稼いでいる、成功している、だから正しい」というのが、麻布妻が夫から受けるモラハラパターンです。お受験をめぐっては、それが悪いほうにエスカレートしがちなのかもしれません。