関西地区では東京と異なる変化も
さらに「コロナはタワマンの弱点を際立たせた」と、前出・榊氏が指摘する。
「タワマンは仕切り壁にコンクリートを使わない構造が多く、隣の生活音が聞こえやすい。緊急事態宣言中、『日中に隣の子供やテレビの音がよく聞こえた』という人がかなりいました。密を避けるため、エレベーターに人数制限をかけたタワマンでは、『出かける時に降りられないし、帰る時には昇れない』との不満も出ました。水害で停電した時のように徒歩で階段を登ることにもなりかねません」
こうした事態に、将来への不安を隠せないでいる住民は多い。武蔵小杉のタワマンに住む60代男性は、こう呟いた。
「会社を退職後、終の棲家にしようと購入したんです。人気の街だから資産価値は落ちないと思っていたら、あの水害のせいで一気に先行き不透明になりました。もう簡単に引っ越せない年齢だし、簡単に売りにも出せない。また同じような台風が来たらどうなるか……と不安でなりません」
“タワマン天上人”となったはずが、災害と資産価値暴落に怯える日々──そんな“地獄の老後”になるとは、男性も想像だにしなかっただろう。
ちなみに関西地区では東京と異なる変化が起きている。ライフルホームズによる「2020年住みたい街ランキング近畿圏版」では、前回調査で31位だった「本町」が1位、同35位だった「堺筋本町」が3位に急上昇した。どちらも大阪城にほど近く、オフィスや飲食街が多いエリアだ。
他にも上位に挙がったのは、市内の中心街が多かった。
「大阪は新築マンションの供給がある地域が限られている。『本町』と『堺筋本町』が上位にランクしたのは、この地域に大型マンションの建設が発表されたことと、大阪全域にアクセスがいいことが評価されたのでしょう」(大阪市内の不動産業者)
※週刊ポスト2020年10月2日号