「今のブレーキは昔のよりも利きますので、やさしくミリ単位で徐々に踏んで大丈夫です。あと、前の車との車間ですが、前の車のタイヤが隠れるぐらいまで行けばいいでしょう。そして、重要なのは後ろの車とのコミュニケーションを取ることです。いわゆる『煽り運転』というものは、後方のドライバーを不快にさせる何かをしたために発生することが多いのです」
たった400mの運転でしたが、この段階で「早く2時間経ってくれ! もう恐ろし過ぎる!!」と思ってしまいました。何しろ道は渋滞しており、信号で停まるとホッとするのです。しかしまだ開始から5分しか経っていません。こりゃあ腹をくくってやるしかねーな、と思っていたら信号が青になり、再び進みます。
「O先生、我々はどこに行くのですか?」
「どこか特定の行きたい場所、練習したい道ってのはありますか?」
「いえ、特にありません」
「だったら、行き先は決めない方が練習になると思います。運転というのはいかにして瞬時に様々な判断をするかがすべてです。行き先を決めてしまうと、様々な予想がついてしまうので、鍛えられません。成り行きで車を走らせた方が上達しますので、私は行き先は決めない方がいいと思います」
「ならば決めないで行きますね」
そこから私は車線変更をしないで済む形で中目黒方面を目指した。山手通りは渋滞しており、これには心底安心しました。行き先については、「そこ、左曲がってみましょうか」「右車線に入り、今度は右折しましょう」などと臨機応変に指示を出してくれる。
気付いたら槍ヶ先の交差点に到着し、そのまま恵比寿方面へ。恵比寿駅のガードを越えたところで「次、右折しましょうか」と白金の方に向かうようです。そこから一の橋、麻布十番へと車は足取りも軽やかに進む。
しかし、麻布十番に曲者がいました……。車道を悠然と走る自転車のオッサンです。そのオッサンの後ろについていくのですが、後ろのドライバーは「お前、なんでそんなチンタラ運転してるんだ!」なんて激怒しているだろうなぁ……と思うも、オッサンは「自転車は車道を走るもの」という大義名分もあってか、悠然としています。そこで、もうこれは付き合いきれん、とばかりに車線を変更し、そのオッサンから逃げました。
ただ、自転車やバイクなどにはちゃんと注意しなくちゃいけないな、というのはオッサンのお蔭で十分理解できたと思います。そこからテレビ朝日の脇を通過し、次の行き先を告げられました。
「三軒茶屋の○○(駐車場のある店)へ行きましょう」
どうやら、○○にて車庫入れの練習をするようです。バックで3回入れる練習をした頃には若干の自信も出てきました。後は自宅に帰るだけですが、この時は正直余裕があったと思います。