新型コロナウイルスが経済に打撃を与え、政府は“社会保障の大幅カット”に舵を切ろうとしている──。老後への不安が募るなか、現行制度のもとで収入と蓄えを確保しておくことが重要となる。最新の年金ルールに対応した「働き方」や「もらい方」を工夫することが、未来の生活防衛策となるのだ。
今年6月に公布された年金制度改正法の目玉のひとつが、「在職老齢年金制度」の見直しだ。現在、64歳まで会社で働きながら厚生年金を受け取る場合、「給料と年金の合計が月28万円」を上回ると超過分の半額の年金がカットされる。だが、2022年4月以降は、カットとなる基準が「給料と年金の合計が月47万円」へと大幅緩和されるのだ。
働き方を変えてみる
これまでは年金カットを回避するため、定年後は厚生年金に加入せずアルバイトなどで働いたり、時短勤務で給与を抑える働き方が主流だった。しかし、年金カットの基準が緩和されたことで、給与を抑える必要もなくなってくる。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「在職老齢年金の見直しで、働き方の常識も変わります。今後は、できるだけ長く会社に残り、社員としてたくさん稼ぐのが賢い選択です」
長く会社勤めできる人材に求められるのは、仕事上の技術や能力だ。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が指摘する。
「今の会社が最も求めるのはITスキル。オンラインを利用した会議や営業が増えるなか、ITを使いこなせる技術は必須です。また、資格や人脈は多ければ多いほどいい。例えば第二種電気工事士の資格を取得したことで、中小企業に採用された例もある。現役のうちに社内の研修制度などで資格を取得し、人脈を築く努力が欠かせません」