年金のもらい方について、常に議論となるのが、「繰り上げ」と「繰り下げ」受給だ。今年6月に交付された年金制度改正法では、この点において変更点がある。
そのなかでも注目すべきは、繰り上げの新ルールだ。現行では、受給開始を1か月前倒しするごとに受給額が0.5%減額され、60歳まで繰り上げれば30%減となる。年金16万円の人が60歳までの繰り上げを選んだ場合、受給額は約11万円となる。
だが、新制度では減額率が0.4%に引き下げられる。60歳までの繰り上げを選んだ場合、月16万円の年金は24%減の月12万円となる。現制度より月1万円の増額だ。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏はこう指摘する。
「60歳から男性の平均寿命82歳までの22年間で試算すると、ざっと264万円も多くなる。まだ現役で付き合いも多い60代は老後で最も生活費がかかりますが、繰り上げ受給すれば手持ちの資金を増やすことも可能です」
新制度の繰り上げにはさらなるメリットがある。「在職老齢年金の見直し(※注)」と組み合わせることで、よりお得になるのだ。
【※注/現行の「在職老齢年金制度」は、64歳まで会社で働きながら厚生年金を受け取る場合、「給料と年金の合計が月28万円」を上回ると超過分の半額の年金がカットされるが、改正される2022年4月以降は、カットとなる基準が「給料と年金の合計が月47万円」へと大幅緩和される】