足もとでは景気回復が鮮明となっている。国家統計局、中国物流購買連合会が発表した9月の製造業PMIは51.5で、前月と比べ0.5ポイント高く、市場予想を0.3ポイント上振れした。この結果について、国家統計局は、「産業のレベルアップが進み、新エネルギー産業が大きく回復、ハイテク、機械設備が好調であった。また、国慶節、中秋節を控え、消費が好調であった」と説明している。
4-6月期の景気回復は、積極財政政策、金融緩和政策の効果による設備投資の拡大が牽引した。一方、消費はそれに比べて動きが悪かった。しかし、その消費も好転の兆しが見え始めており、10-12月期の景気は予想を上回るペースで回復しそうだ。
海外の移動制限解除への道は
一方の日本について。2021年の東京オリンピックの開催に向けて、政府、東京都、関係者は様々な方法を模索しているが、その中で無観客での実施も検討されているようだ。しかし、無観客でのオリンピック開催では、経済効果は激減する。経済界としては、できる限り海外からの観光客を招いて開催してもらいたいと考えているだろう。
日本の観光、消費関連企業の収益において、インバウンド消費のウエイトは大きい。観光業界では、訪日観光客の4割程度(香港を含む)を占める中国人観光客の来日再開が切望されている。
中国政府は積極的に海外旅行を奨励することはないだろうが、市民の海外旅行ニーズは高い。国内の移動制限が必要無くなれば、海外の移動制限解除にも道が開かれよう。
中国の次の大型連休は2021年2月12日から始まる春節だ。この春節に中国が海外旅行を解禁するかどうか。日本がオリンピック開催に向けて試験的にでも海外旅行者を受け入れるかどうか。この期間が大きなポイントになるだろう。
空運、鉄道、旅行・ホテル、テーマパーク、百貨店、化粧品など、日本のインバウンド消費関連も8月以降、戻り相場となっている。とはいえ、日経平均株価がすでに新型コロナ流行前の水準に近づきつつあるのに比べれば、出遅れ感は強い。これらの銘柄も、業績の底打ち、回復が見え始めれば、大規模な株価の水準訂正も見込めそうだ。両国政府の海外旅行解禁に向けた動きには、充分注目したい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。