中国の強力なコロナ封じ込めシステム
ただ、ひとたび感染者が出ると、瞬時に対応が変わる。11日に青島市で3人の感染者(無症状)が確認された。この内、2人は病院で受診した際に確認され、残りの1人はその濃厚接触者であった。その時点で、この3人の住む住宅、受診した病院は封鎖され、接触者すべてのPCR検査が行われた。
青島市衛生健康委員会は12日早朝、950万人の市民すべてを対象に、5日以内にPCR検査を実施すると宣言した。11日の時点で青島市は、中国全土で“危険地域”と認識されていた。各都市の交通機関では、青島市から入ってくる者を選別し、健康カードを使ってPCR検査陰性の証明を提示させ、安全が確認されない限り、その都市には入れない仕組みとなっている。
ポイントを整理しておくと、中国では外出する者にはスマホの携帯を実質的に義務づけ、そのスマホには、GPSの位置情報を利用し、過去の移動を記録してある健康カードアプリが必ずダウンロードされている。市民の検査記録に加え、居住地、移動記録をほぼ完全に把握した上で、大規模な検査をスピーディに行うことができる検査医療体制を整えている。これが中国の新型コロナ対策の核となる部分である。
フランス、イギリス、スペインなどの欧州諸国では、夏のバカンスシーズンを終えたあたりから感染者数が急拡大している。
トランプ大統領は12日夜、フロリダ州で選挙集会を開いた。13日以降、ペンシルベニア州、アイオワ州など激戦区を回る。トランプ大統領の新型コロナに対する姿勢が選挙運動を通してアメリカ全土に広がる可能性がある。
感染者を早期に見つけ、感染者とその濃厚接触者の生活範囲をピンポイントで封鎖し、徹底的に感染を広げないようにして、病を封じ込める強力なシステムを中国は持っているが、アメリカにはそれがない。特効薬もワクチンも完成していない以上、個人一人ひとりが注意することで三密を避けるしかないが、アメリカがそれを軽視するのであれば今後、欧州のように感染者が急増するシナリオも十分考えられる。そうなった段階で、もしバイデン氏が新大統領になっていたとすれば、主要都市が再びロックダウンされかねないだろう。選挙結果以上に、選挙後のアメリカ経済への不安は大きい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。