中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

仕事は苦役か否か? セミリタイアを「羨ましい」と思う心理の本質

 私に「辞めたい」と言ってくる人々だって、自分に向いていない仕事は選んでいないはずなんです。そして、それなりに成果をあげている人もいるわけで、一体何がそんなに不満なのだろうか、とこの1か月半ほど思い続けてきました。

 その結果、仕事を苦役と考える本質は、一緒にやる人間のことがあまり好きなのではないのではないか、という仮説に辿り着きました。私自身は、フリーランスということもあり、人事異動で望まぬ部署や合わない人と同じ職場に強制的に行かされることはありません。気が合わない人とは一度仕事したらおさらば。結局、長く一緒に仕事をした方々のことが好きなんですよ。

 だから、業務が「楽しくて仕方がない」といったものではないにしても、仲間と一緒にプロジェクトを推進していくこと自体は楽しかったりもします。その後の飲み会も楽しいですしね。そこそこ向いているはずなのに、仕事仲間との人間関係がその仕事を「苦役」と化すのであれば、極論ですが、一旦会社から離れて独立してしまうのも手かもしれません。そうすると、かつての希望に満ちた楽しい仕事人生が戻ってくるのでは、とも感じます。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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