7-9月期の中国の実質GDP成長率は4.9%であった。4-6月期は3.2%だったので、高くはなっているものの、市場予想の5.2%と比べると0.3ポイントほど低い。そのため、発表のあった10月19日、上海総合指数は売られる展開となった。
ただ、低いとはいえ、1-9月では0.7%とプラスに転じている。10-12月期の成長率は5%を超えてくるだろうから、通期では1.8%以上になると予想される。10月11日に発表されたIMF(世界通貨基金)による世界経済見通しでは、2020年における中国の経済成長率は1.9%と予想しているが、おそらく±0.1ポイント程度の精度で当たるのではないかとみられる。
市場予想ほど高くなかった理由は、中国金融当局が足元の景気に自信をもっているからだと考えている。当局による金融緩和の程度を知るうえで、インターバンク市場における金利動向は重要な指標の一つとなり得るが、その推移をみると2月に入り急激に低下したものの、5月は底這い状態となり、6月に入ると上昇に転じている。そうした傾向は1か月、3か月、6か月、9か月物でよりはっきりしている。6か月、9か月物については足元で、すでに急激に低下する前の水準に戻している。
新型コロナ禍への対応は経済活動を著しく阻害するとの認識から金融当局は流行発生直後から、充分な流動性資金を供給したわけだが、その後は過剰な流動性資金を供給する必要がないほど、経済は回復したとみているのだろう。
新型コロナ流行の開始時点で中国の初動が遅れたとの批判もあるが、むしろ逆かもしれない。初期の対応が早かったからこそ、短期間での景気回復を実現できたとも考えられる。
流行し始めたのは1月に入ってからだが、1月23日には発生源となった武漢市やその周辺をいきなり都市封鎖した。中国共産党は封鎖する直前、中央政府内に指導組織を設置し、指揮を統一、トップダウンで各地域に全力で対処させる体制を構築した。この組織が全国的にPCR検査を徹底させ、感染の拡大した都市において驚異的なスピードで病床数を増加させた。2月に入ると地方政府に健康カードを発行させ、GPSを使って人の移動を把握、濃厚接触者の特定と隔離がもれなく迅速に行えるようなシステムを用意させた。
生産活動にも直接関与した。2月上旬に緊急処置として、春節休暇を1週間ほど引き延ばし、全国一斉に生産をストップさせた。その後は日々の生活に必要不可欠である重要性の高いインフラから順次正常化させる措置をとり、できる限り人の接触機会を減らした。