40代のシステムエンジニアの男性・Sさんは現在、ある意味で夢のような生活を送っている。Sさんは、自宅から遠く離れた場所でのプロジェクトに携わっており、平日は現地のホテルで暮らし、週末は自宅に帰る生活が1年以上続いているのだ。ホテル暮らし──何とも優雅で甘美な響きだが、実態はどうなのか。
都内の某高級ホテルに20年以上勤務するベテランホテルマンが解説する。
「“暮らす”という言葉の定義が難しいですが、長期滞在する方、具体的に言えば半年ぐらい泊まる方はいます。事前に『○月○日まで泊まりたい』と言われれば、こちらとしては断る理由がない。ただ、ある程度の日数ごとに精算して頂く形になります。大歓迎でもなければ避けたい客でもなく、“普通のお客様”ですね。強いて言えば、大口の団体の予約が入った時、長期滞在のお客様に部屋を移動してもらうわけにはいかないので、そこに気を遣うぐらいでしょうか。
よく聞かれるのが、『1か月泊まるから安くならない?』といった類の質問ですが、ウチのホテルでは連泊プランを用意しており、それを活用してもらっているので、個別の交渉には応じていません。大口の団体や法人契約なら話は別ですが……」
長期滞在なら確実に売り上げが見込めるのだから、上客として扱ってもらえるかと思いきや、「普通の客」とは拍子抜け。「ラフな格好で館内をウロウロされるのは困る」(同前)という事情もあるようだ。
最初はウキウキだったものの…
前出・Sさんがホテル暮らしを決めたのは、極度の面倒くさがりで、仕事もハードだったからだ。
「最初は現地で部屋を借りるつもりでした。けれどもずっと忙しくて、部屋を探す暇さえなく、とりあえずはホテルへ。部屋を借りるとなると、諸々の手続き、引っ越し、家具や家電の用意など、色々と手間は掛かりますし、仕事が終わるのも遅くて、気づけばダラダラとホテル生活を続けています」(Sさん。以下同)