住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「上尾」(埼玉県上尾市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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新型コロナウイルス騒動で大きく変わったのが、住まいに対する考え方。外出自粛要請が出たり、リモートワークが一気に進んだりしたことで、世の流れは「オフィスから遠くても、家が広いほうがいい」という考え方にシフトしています。そんな方に注目してもらいたい街の1つが上尾(読みは「うえお」でなく「あげお」)。20万以上の人口を抱えながら、メジャーな観光地や名産物がない上尾市ですが、住むにはなかなかの場所です。
鉄道はJR高崎線のみ。ただし、巨大ターミナル駅の大宮まで8分、湘南新宿ラインで池袋まで35分、新宿まで40分、上野東京ラインで東京駅まで43分と、都心でもラクラク通勤通学圏内です。その昔、国鉄の「順法闘争」(労働争議)に怒った乗客が暴徒化し、暴動を起こすという、鉄道史に残る事件(上尾事件)を起こした過去がある上尾ですが、乗降客数は高崎線の大宮以北ではダントツの1位。存在感は圧倒的です。
道路状況は良好です。駅のそばを中山道(国道17号)が通っていて、移動の基本はこちら。さらに首都圏をぐるりと巡る国道16号や圏央道があり、縦横無尽に移動できます。国道17号の渋滞解消を目指す「上尾道路」も建設中で、将来的には都心へのアクセスも良くなりそう。ロードサイド型の店舗も多いので、車は間違いなく必要です。ただ、ガードレールや歩道がない道が多いのは気になります。子どもや自転車利用者は要注意でしょう。
デパートもある街・上尾
どうにも地味で、“埼玉のベッドタウン”という印象の人も多いだろう上尾ですが、暮らしやすさは折り紙付きです。東口にはデパート(丸広百貨店)、西口には商業ビルのショーサンプラザ、イトーヨーカドーがあり、スーパーマーケットやドラッグストアなど、生活必需品を買う店の選択肢も豊富。大宮やさいたま新都心も電車ですぐで、買い物には苦労しません。飲食店はファミリー系やチェーン店が主ですが、和洋中、甘味、喫茶、専門料理、エスニックなど、ひと通り揃っています。