コロナ禍での働き方の変化から、在宅でのリモートワークを認める企業も増えており、「東京に住み続ける必要はあるのか?」という意見が真剣に議論される風潮も見受けられるようになった。有名企業の中には本社の地方移転を決めたところも出ており、地方に住んでいても仕事の選択肢は今まで以上に豊富にある。そうした中、いち早く“脱東京”を決断し、11月から佐賀県唐津市に移住をするネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、いま、地方移住する意義について述べる。
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私は元々地方に移住する気はありませんでした。そもそもの想定は、ネットニュース編集者として、2020年8月に開催予定だった東京五輪を報じたうえで、アメリカに移住し、手始めに米大統領選挙をリポートしようというものでした。しかし、コロナにより、アメリカに行くことはできなくなったため、諦めた。そんな状況下で、ライターのヨッピー氏から「アメリカに行けないのならば、佐賀に住めば?」というオファーをいただき、佐賀県唐津市に移住することになったのです。
この決断について正しかったかどうかは、時間をかけなくては分からないでしょう。しかし、この段階で「脱東京」は案外正解だったのかな、という気もするんですよね。
なにしろ、東京の満員電車というものは「異常」のひとことです。まさに、人を詰めまくっておしくらまんじゅう状態にして運ぶようなもの。痴漢被害や痴漢冤罪なども頻繁に発生する、極めて異常な空間が東京を含めた首都圏の満員電車の現実です。
こうした状況を「異常だ」と言うのは簡単ですが、これに声をあげると「お前は理想主義者だ」やら「お前はサラリーマンの現実を分かっていない」などの反論を受ける。
しかし、「満員電車は異常だ」という声こそ正常だと思うことが、今の日本人には必要なのではないでしょうか。だから私は東京を離れます。もう一生涯満員電車なんて乗りたくない。こんな異常空間に一瞬たりともいたくない。
そうした人生を過ごすにはどうすべきか、と考えたらもう地方に行くしかないんですよね。ただ、一体どこに行けばいいか? という問題にブチあたります。それは、「時の縁」でいいのではないでしょうか。