栗田氏によれば、彼らは独自の同業者ネットワークを持ち、休日や他の客の乗車中には客を融通しあっている。自身と同等のサービスを提供できる仲間を見つけてネットワークを築くわけだ。
「タクシーで嫌な思いをしたお客さんは多少待ってでも、信頼できるタクシーを電話で呼んでくれるようになる」
もちろん流し営業でも、目的もなく走り回っているわけではない。
「彼らは“虎の巻”を持っていて、シーズンごとに遠距離客が出やすい停車位置をメモしていたりと、緻密なデータを蓄積している。重要なのは客を送ったあと、再び繁華街に戻るルートだそうです。行き先が客を拾いにくい郊外であれば自腹で高速に乗り、繁華街に引き返す。月に30万円も高速代を払うと豪語するドライバーもいます」
やはりそこまで工夫しなければ高給は取れないのか──そう考えるのは早計だ。
「コロナ禍でタクシーも苦しい時期ではありますが、単身の高齢者や運転免許返納者が増えるなど、通院や買い物など日常の足として使われる機会が増加している。慣れれば500万~600万円稼ぐことはさほど難しくありません」
“60代以降も稼げる仕事”として新たな選択肢となるか。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号