緊急事態宣言の解除後も事態は深刻だ。東北地方でデイサービス事業を展開する法人の施設では、8月に職員のコロナ感染が判明し、2週間の休業と同時に全職員20人のPCR検査を行なった。同法人の代表はこう話す。
「濃厚接触者以外の14人は、検査費用約30万円を会社が負担。休業による売り上げロスに加えて、検査費用の持ち出しの打撃は大きかった」
施設の苦境が、利用者に与える影響は甚大だ。事業所を閉所した前出のA氏は、契約利用者8人の“行き先”を探すのに奔走したという。
「担当のケアマネジャーの伝手を使って、なんとか全員に他所のサービスに移ってもらえました」(A氏)
ただ、“ここにお世話になりたい”と事業所を決めた利用者や家族にとっては青天の霹靂だ。事業所の閉鎖が増えれば、移転もスムーズにいかなくなる可能性がある。淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏は「今後さらに問題は深刻になる」と指摘する。
「コロナ以前から訪問介護業界ではヘルパー不足という問題もあった。需給ギャップがさらに広がり、ちょっと気難しい利用者だと思われたらヘルパーから『行けません』と断わられるのも当たり前の時代になるでしょう」
訪問ヘルパーらを頼りにしながら“住み慣れた自宅で最期を迎えたい”と考えていた人たちは、今後は、家族がある程度の介護負担を背負わなければ、その願いが叶わなくなるのかもしれない。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号