家族の仲がいいからといって、必ずしも成功するわけではない「在宅介護」。介護保険制度を活用して、お金も手間もかけずに行うことが失敗しない重要なコツだ。コロナ流行以降、施設に入居することが簡単ではなくなったいま、唯一、残された手段である在宅介護を上手に切り抜けたい。
いままで、介護の理想といえば、細やかなサービスを受けながら安心して生活できる介護付き有料老人ホームに入居することだった。だが、全国各地の高齢者施設でクラスター(感染者集団)が発生し、群馬県の施設では16人の死者が出た。高齢者が集団で住まう環境下では感染被害が深刻化することが明らかとなり、感染が拡大する地域の施設では、入所者に帰宅を促す動きもある。
数日から半日程度の短期間受け入れるショートステイや、デイサービスの受け入れも打ち切られ、コロナ禍では、否応なしに在宅介護を選ぶしか道がなくなっている。
そもそも内閣府などの調査によれば、終末期の療養が必要になったときは「自宅で療養したい」と回答した人が60%以上を占めたほか、介護が必要になってからも「自宅での介護」を希望する人が4割を超えた。
国も在宅での介護を推進している。全国的に介護施設や介護職員が不足していることもあり、介護の場を施設から在宅へと移すことを重視。2025年までに「地域包括ケアシステム」を全国的に導入することを目指している。このシステムは、介護が必要になっても、住み慣れた自宅で生活することをサポートする仕組みだ。たとえ重い要介護状態となったとしても、住み慣れた地域で最期まで自分らしい暮らしをまっとうするため「住まい」「医療」「介護」「生活支援」を一体的に提供しようというものである。
ケアタウン総合研究所代表の高室成幸さんが指摘する。
「医療と介護にかかる財政負担を減らす観点から、国も制度調整をして在宅介護を促している。施設から自宅へと介護の場が移っていく流れは、今後ますます強くなっていくでしょう」
親の介護はもちろん、数十年後には自分自身が子供の世話になることも考えておかなければならない。在宅介護がうまくいく人、うまくいかない人では何が違うのか。
「まだまだ先」──そう思っていると手遅れになるかもしれない。