収束の見通しが立たない新型コロナの影響は、介護業界にも暗い影を落としている。東京商工リサーチによると、今年1~9月の老人福祉・介護事業の倒産件数は94件(前年同期比10.5%増)。とりわけ、倒産した通所・短期入所介護事業(デイサービスやショートステイ事業)は30件で、前年同期比25%増と苦境が際立った。
要介護3以上の手厚い介護が必要な人が入居する特別養護老人ホーム(特養)もコロナ禍の煽りを受けている。
入りたい施設に入れない
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が特養を運営する法人を対象に行なった調査(2020年6月実施。430法人が回答)によると、4月の収益が前年同月に比べて減った法人は34.7%。5月の収益については50%程度の法人が減収を見込んでいた。
千葉県にある特養の施設長B氏はこう語る。
「以前はベッドが空けば、早ければ1週間で次の入所者が決まっていたが、最近はそうはいかない。入所に際しては、順番待ちをしている方のところに施設側が赴き、心身の状態を調べるのですが、その調査がコロナのため滞っているのです」
有料老人ホームでも、「人手不足が激しく、紹介業者を通じてスタッフを採用する際の紹介料などで経営が圧迫されている」(都内の有料老人ホーム運営法人の代表者)といった悲鳴が聞こえる。
今後は“介護が必要になったら、ここに入りたい”とひとつの施設に決め打ちするのではなく、複数の選択肢を持っておかなくてはならない。