だからこそ、PV(アクセス数)やシェア数を稼ぎたい時は1960年代後半~1970年代後半生まれの男性の郷愁の念を呼び起こすネタを出せばいい、という一つの成功法則を見つけました。
漫画についてはそうですが、当然ゲームも該当するでしょう。ファミコン、スーパーファミコンが2大巨頭ですが、2000年代になって当時のゲームをプレイステーションやPS2でプレイできるようにした「ナムコミュージアム(しかもアーケード版!)」や「カプコンジェネレーションズ」はヒットしました。
最近でも30種類の厳選されたゲームをプレイできる「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(2016年発売)と、「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」(2017年発売)がヒットしました。今年11月にはゲーム&ウオッチが、35周年を迎えた『スーパーマリオブラザーズ』とコラボして復活します。
ちなみにファミコンミニの方は、「週刊少年ジャンプ創刊50周年記念バージョン」なんてものもありました(2018年発売)。これは、ジャンプの作品をモチーフとしたファミコンゲームが20種類入っているもの。
『キャプテン翼』『聖闘士星矢』『キン肉マン』などの他、しきりとジャンプの巻頭コーナーの『ファミコン神拳』で紹介された『ドラゴンクエスト』も収録されています。開発者もよく分かっていますね。この組み合わせはもう我々の世代は泣いて喜びます。
人口も多く、お金も使える年齢になったこの世代に対しては、広告業界からも熱視線が送られています。広告会社の人と喋っていても、「この頃のキャラを使ったCMをやってみたい」との声はよく聞かれます。今回、突然のまつもとさんの訃報を受け、今後は現在の40~50代の人々が読んでいたジャンプ作品の作者への仕事依頼が「お元気なうちにぜひ!」と相次ぐのではないでしょうか。
考えられるのは宮下あきら氏(67)、北条司氏(61)、江口寿史氏(64)、次原隆二氏(62)、高橋陽一氏(60)、高橋よしひろ氏(67)などでしょうか。それらのリバイバル作品や関連商品が楽しみでなりません。それと同時に、『オレンジロード』の恭介、まどか、ひかるの3人が40代になったら……的な作品を今後読めない寂寥感も覚えるのでした。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。