こうした女性誌の提案が現実となった例もある。都内在住の62歳男性が定年間際だった2年ほど前、妻の不在時に自宅リビングにある棚の引き出しを開けると、「情報通知書」と書かれた書類が見つかった。
「身に覚えがないので調べてみると、離婚後の年金分割について年金事務所から情報提供を受けた書類でした。妻が離婚を考えているとは思いもよらず愕然として、独立した娘に相談したら、『自分で考えたら』と冷たい返事でした。後から知りましたが、妻を大切にしなかった私に愛想をつかし、娘が妻に定年後の離婚を勧めていたそうです。
私は定年を迎えましたが、妻からはまだ離婚を切り出されていません。考え直してくれたのか、分割額が少ないから躊躇したのかもわからず、目の前にいる妻に本音を聞くこともできない。毎日胃が縮む思いです」
経済ジャーナリストの荻原博子氏が解説する。
「夫のDVや横暴さに嫌気がさして、熟年離婚を希望する女性が増えています。ただし年金分割で収入が2分されると、夫婦共倒れになる可能性が高い。それでも熟年離婚したいという女性には、何年もの長期計画で貯金を作り、独り暮らしの住まいのアテができてから踏み切ることを提案しています」
※週刊ポスト2020年11月20日号