「離れて暮らす父親の様子を見に久しぶりに実家に行くと、隣の家の人から『屋根の一部だけ瓦が新しくなっている』と教えられました。まだら状に瓦が新しくなっていて、父親に聞いても要領を得ない。雨漏りなどの形跡もないし、どうやらその手の業者に騙されたようで……」
と言うのは、東京在住の50代男性。認知障害が出てきた家族がいると、このようなトラブルに巻き込まれやすい。
消費者庁によると、65歳以上の人のお金に関するトラブル関連の相談のうち、「訪問販売」と「電話勧誘販売」が全体の2割ほど。ところが、認知症高齢者に限るとその割合は約2.5倍に跳ね上がる。ケアタウン総合研究所所長の高室成幸氏が指摘する。
「高齢になって判断力が低下すると、不要なものまで買わされるケースが増えます。特に注意したいのが、認知症の初期。相手が勧める商品の機能やサービスの内容について、“理解できないことを隠したい心理”も働き、『そんなにいいモノなら買いましょう』となってしまいやすい。その結果、家の中が高価な健康食品や美顔器、機能過多の電気製品などで溢れかえることになる」
認知症を患う人を狙った悪徳商法は後を絶たず、離れて住む家族を悩ませることになる。
「親が認知症になった方からは、高価な健康食品や牛肉が毎月実家に届くといった定期購入の被害相談も多く寄せられます」(前出・高室氏)