冒頭のケースのように不要な住宅修繕や新聞などの定期購読といった、「契約」に関するトラブルにも巻き込まれやすい。
その理由について「認知症を患うと、“約束ができなくなる”のです」と、前出の高室氏。
「契約とは、つまり誰かとの約束です。契約の内容を理解できずに、やすやすと大金を支払う。逆に家賃や医療費など、当然払わなければならないものについて、その契約を履行できない。認知症になると様々な場面で約束が守れなくなる。多くの場合、金銭絡みのトラブルに発展する」
お金に関するトラブルは、家族間でも起こる。たとえば、「物盗られ妄想」という症状がある。認知症の初期に出やすく、財布や現金が無くなったと言っては「あなたが盗んだのでしょう」と近親者を疑う症状だ。前出の高室氏が続ける。
「お金をタンスの奥にしまっても、すぐにそのことを忘れて『無くなった』『盗られた』となる。これは自分が財布をしまった場所を覚えておき、必要なときにそれを取り出すという、いわば“自分との約束”を守れなくなった状態なのです」
別掲の表に、高室氏監修の「親がお金のトラブルを抱えている疑いがあるときのチェックリスト」を掲載した。参考にしながら老親の様子を確認したい。
※週刊ポスト2020年11月20日号