──今後の打開策は?
コロナ以前から注力してきた2分野への投資をさらに拡大することです。ひとつは、リクルートのオリジンビジネスであるHR(ヒューマンリソース)、つまり人材マッチングのビジネスに注力する。
2012年にアメリカの求人検索エンジンを手がけるIndeedを965億円で買収しましたが、我々のこれまでのHR分野の知見と、Indeedのテクノロジーやデータ解析力を掛け合わせてさらに進化させていく。
2018年にはアメリカの企業レビューサイト大手のGlassdoorも1285億円で買収しました。Indeedは中堅・中小企業の求人に強く、Glassdoorは大手企業や人気有名企業の人事制度や報酬などのレビューに強いので、今後は求職者がIndeedで仕事を探し、意中の会社をGlassdoorのサイトで調べるといったシナジーも期待できます。
もうひとつは、「Air ビジネスツールズ」という業務・経営支援サービスです。
その中核が「Airペイ」という決済サービス。iPadまたはiPhoneとカードリーダー1台だけで、クレジットカードや電子マネーなど様々な決済が可能になります。特に中小企業や個人商店は「手間がかかる」とキャッシュレス決済導入を敬遠しがちですが、「Airペイ」ならハードルは大きく下がります。
──次々と社内から新企画が生まれる理由は?
リクルートでは会社の理念として「新しい価値の創造」「社会への貢献」「個の尊重」の3つを掲げています。
その中でも「個の尊重」を唱える企業は珍しい。これこそリクルートの企業文化を端的に表わしている理念だと思っています。社員ひとりひとりの情熱に賭ける企業文化こそ、リクルートの競争力の源泉です。
【プロフィール】
峰岸真澄(みねぎし・ますみ)/1964年生まれ、1987年にリクルート入社。「ゼクシィ」や「R25」の創刊に携わり、2003年に執行役員に就任。2009年取締役を経て、2012年から代表取締役社長兼CEO。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年11月20日号