コロナの感染拡大で、過去最大規模の最終赤字となったJAL(日本航空)株を空売りしていた個人投資家のB氏(40代/男性)も肩を落とす。
「JALに限らず、世界中の航空会社が悲鳴を上げるなかで、航空業界がコロナ前の業績に戻ることはもう無いだろう……、私だけでなくほとんどの人がそう思っていたはずです。ここは大きく儲けるチャンスと思い、空売りを仕掛けました。ところが、11月9日に米国のファイザーがワクチンの治験で有効な結果が出たと公表したことを受けて、航空株も一気に急騰してしまった。もちろんJALの株も1日で300円以上上昇しました。あんなに絶望的だと思われていた航空株がここまで上がるなんて、誰も予想出来ませんよね?」
B氏の失敗はこれだけで終わらなかった。コロナ禍で世界的に外出自粛ムードが高まるなか、巣ごもり需要で米国の「GAFAM」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)をはじめとする巨大IT企業の業績は拡大していた。それら「グロース株(成長株)」はどんなに株価水準が高くなっても株価上昇が続き、世界的にグロース株一辺倒の相場が続いてきた。日本でもIT関連の多い東証マザーズ銘柄が個人投資家から人気を集めてきたが、これも9日に一変した。
「ここ最近は、今の潮流に合わせて航空や旅行関連などのバリュー(割安)株は売り、ハイテク関連などのグロース株を積極的に買って上手く利益を出してきました。保有していたバリュー株は早々に手放して上手く損切り出来たと思っていたのに、ここに来てバリュー株が息を吹き返し、これまで地道に買い集めてきたグロース株は軒並み値下がりしてしまった。やること全てが裏目に出ています……」
29年ぶりの高値更新でバブルに沸く株式市場だが、すべての投資家がその波に乗り切れているわけではないようだ。