新型コロナウイルスの“第3波”が指摘されている今年の冬。長引く巣ごもり生活の影響で、思わぬ隣人トラブルに巻き込まれることもあるかもしれない。出来ればお隣りさんとは不要な争いは避け、仲良くやって行きたいもの。穏便に解決するにはどうすれば良いか。隣人トラブルに関する悩みについて、弁護士の竹下正己氏に回答してもらった。
【相談】
隣人は昔からの農家で、いつもとれたての野菜をくれたりと、良好な関係を続けています。しかし、最近気になることがあります。畑の隅で大量のゴミを燃やすため、辺りが煙だらけになってしまうことです。わが家は新築したばかりで、壁が白色のため特に気になっています。市の条例ではゴミを燃やしてはいけないことになっているはずですが、隣人と気まずくなりたくないので注意できません。よい解決方法を教えてください。(青森県、34才・パート)
【回答】
ゴミは廃棄物ですから、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の規制を受けます。同法では、政令で定める基準に従ってする以外、「廃棄物を焼却してはならない」とされ、違反すれば、懲役や罰金で処罰されます。政令に定める基準とは、許可を受けた廃棄物処理業者が強力な焼却炉を使って行う焼却であり、普通できることではありません。
しかし、「公益上もしくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却または周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの」は焼却できます。政令では、日常生活で通常行われる軽微なたき火のほか、「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」を例外としています。農家にとっては稲・麦わら等の農作物の残渣等の焼却は、病害虫駆除や灰を土に混ぜて肥料にすることができるので、農業経営に必要なことなのです。
そこで自治体でも、条例で焼却炉を使用しない焼却を原則として禁じながら、例外的に許される焼却として、伝統的行事および風俗慣習上の行事のための焼却行為などと並んで、「知事が特にやむを得ないと認める焼却行為」を挙げ、樹木や農作物の病害虫の防除、肥料作り、土壌改良、林業・農業を営むための焼却などが例示されているところがあります。隣人の焼却しているゴミが、農作物の残り物でこうした目的で焼却しているものであれば、条令に違法していないことになります。