米国も日本においても、新型コロナウイルスの感染拡大は一向に衰える様相は見せず、新規感染者数が過去最多を更新する日々が続いている。その一方で、株価は驚くほどの急騰を見せている。はたして今後も株価上昇局面は続くのか。経済アナリストの森永卓郎氏は、「現在の株価水準は明らかにバブルで、しかもいつ弾けてもおかしくないのではないか」と警鐘を鳴らす。
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日米の株式市場が連日の株価上昇に沸いている。日経平均株価は2万6000円台後半に突入し、約29年6か月ぶりの高値となっている。ニューヨークダウも史上初めて3万ドルの大台に乗せるなど、その勢いは止まらないように見える。
だが、今の株高は明らかに異常な水準ではないだろうか。株価は過去の経済情勢を反映するものではなく、半年ほど先の未来を映し出す鏡だ。しかし、実際の景気の先行きはきわめて厳しいと考えている。
ひとつの理由は、バイデン大統領の誕生だ。トランプ大統領が派手なバラマキ政策を行なったため、米国は9月に終了した2020会計年度で330兆円もの財政赤字を出した。
それに対して、バイデン氏は良くも悪くも「常識人」なので、引き締め策で財政バランスを回復させる方向に舵を切るだろう。バラマキを抑制し、公約した富裕層への増税も実行すると思われる。財政の緊縮は確実に景気後退の要因となるから、少なくとも短期的には米国経済の足を引っ張ることになる。
さらに、そこに新型コロナウイルスの感染拡大がのしかかる。米国では、11月13日に新規感染者が過去最多の18万人を超え、その後も衰えを見せていない。日本でも、新規感染者が連日過去最高を更新する「第3波」の猛威が止まらない。
ところが、そのような状況下であるにも関らず、日経平均はバブル後の最高値を連日更新し、ニューヨークダウも史上最高値をつけているのだから、どう見てもおかしな現象と言わざるを得ない。
私は、今の株式市場は完全な鉄火場と化し、バブルを引き起こしているのだと考えている。経済動向や企業業績などは関係なく、純粋な投機で株価が形成されているのだ。
17世紀のオランダで、チューリップの球根に対する世界初のバブルが発生した。「経済学の巨人」ジョン・ケネス・ガルブレイスによると、そのピーク時には球根1つに、「葦毛の馬2頭と馬車と馬具一式」と同じ値段がついたという。常識で考えれば、そんなことはあり得るはずがない。今の株価高騰は、まさにそれと同様の異常事態だ。