2021年から始まる「大学入試改革」。来年1月には、これまでの「大学入試センター試験」が廃止され、「大学入学共通テスト」が導入される。入試制度の変化にただでさえ神経質になりがちな受験生を、今年はさらに新型コロナウイルス感染症の蔓延という大きな波が襲った。
散々振り回された受験生が「安心・安定」を求めるようになり、ブランド校の人気は下がりつつあるようだ。学部についても、観光系や“国際”と名のつくグローバル系学部は、コロナ禍のあおりが直撃している。就職先となる旅行会社や航空会社が軒並み勢いを失い、“売り”だった留学もできなくなったからだ。
だが、そんな中でも評価を高めた大学がある。グローバル系に分類される立命館アジア太平洋大学(APU・大分県別府市)だ。
学長の出口治明さんは「コロナ禍のピンチであっても学びの機会を確保できた」と話す。
「約6000人の学生のうち半分が外国人留学生で、その3分の1がコロナの影響で春休み以降、母国から出られない状況になりました。そこで、日本で最も早い段階からオンライン授業の体制を整備。2月にビデオ会議システムのZoomと契約し、Wi-Fi環境のない学生には機器を貸与しました。日本に戻ってこられない学生がいる限り、すべての授業をオンライン化し、教育の機会均等を実現します」
出口さんは、現状ではオンライン授業と対面授業、双方のメリットを生かした臨機応変な対応が必要だと語る。
「コロナ禍でも、学生の学ぶ意欲は変わらなかった。1回生は全員寮で暮らすため、海外の天災や戦災なども他人事ではなくなります。うれしいことに、日本人学生たちは“自分たちはいざとなったら国内の両親に援助してもらえる。留学生から優先的に助けてあげてください”と申し出てくれました。
コロナのような予測できない事態に陥ったときにも、自分の頭で考えをまとめ、発言する力を養う好機になったのではないかと考えています」(出口さん)
同大学では、教職員や卒業生らが「APU Hands」という支援団体を作り、帰国もアルバイトもできずに困窮した留学生たちに手を差し伸べた。約4000人の学生に、2週間ごとに食材を配布し、それを知った地元市民からも、米1トンなどの差し入れが相次いだ。